小杉湯となり

Kosugiyu Tonari
Tokyo, Japan
Completed in 2020

建主:小杉湯
企画・運営:銭湯ぐらし
構造:TECTONICA
植栽:BROCANTE
施工:まつもとコーポレーション
写真:Katsuhisa Kida / FOTOTECA

Publications
- 新建築 2020年5月号, Japan
- domus web 09.10.2020, Italy
- CASA BRUTUS No249, Japan
- 商店建築 2021年1月号, Japan
- DETAIL web 01.02.2021, Germany
- 新建築 VISUAL INDEX web movie, Japan
- TECTURE MAG web 02.01.2022, Japan

昭和8年から続く老舗の銭湯、小杉湯。その隣で、銭湯のある暮らしを提供する施設である。銭湯には、「人と話さなくてもいいけど、人とつながれる」、会話を前提としない静かなコミュニティがある。それは「ある集団に属する」というよりも、人々の営みが織り込まれた「環境に属する」といった感覚であり、その環境が小杉湯においては、男湯と女湯にまたがって架かる大きな越屋根によって生まれる上空にあって、太陽の光を取込み、風が抜け、くぐもった湯気が立ち込め、匂いを溶かし、音を響かせている。室内だけど上空があるような、この独特な環境のあり方を展開して、銭湯的なコミュニティを拡張したいと考えた。
3階建ての建物を小さく切り分けるように、階と階の間を半透明な層として、外部環境を取り込む。直接、あるいは庇に反射して取り込まれた光が層の中で拡散を繰り返して柔らかさを湛え、メッシュの膜を通して室内に落ちてくる。1階は南側の強い光を庭の紅葉の葉の輪郭と共に天井の膜に写し取り、2階は穏やかな北側の光で満たされている。膜は見上げる角度によって空が見えたり、湯気のようにくぐもったりしている。南北の風が半透明な層を通り抜け、熱を奪いながら膜を介して室内の空気を優しく動かす。音や匂いが薄い床を通して人の気配をそれとなく伝える。人々の暮らしの上には、ゆらぎ、うつろう環境が広がっている。